『エレGY』自分の理想の女の子とイチャイチャしてるだけじゃん

エレGY (講談社BOX)

エレGY (講談社BOX)

 絶賛の声も多いし、何よりあの乙一滝本竜彦がオススメしてるんで読んではみたんだけど…。正直言ってこっちの期待や予想を上回るものは何も無かったようだ。大槻ケンヂ、並びに滝本竜彦の小説とエッセイ全てを読破している自分にとっては、エレGYと呼ばれるヒロインが上記の2人の作品に出てくる女の子のカット&ペーストに現代風(ファウスト的)味付けを加えてみましたってだけにしか見えない。ぶっちゃけただのオタクの理想のメンヘル女子であって、そこから一歩も出ていない。7割ノンフィクションというのが謳い文句らしいけど、リアルならいいってもんじゃないでしょ。
 いや、いるよ。実際にこういう子。つーか。
俺、そういう子が彼女だったし。
昔、さるさる日記で「俺死ね俺死ね」ってばかりの内容の自虐日記書いてた時に、女子高生からメール来て、告白したもん、俺。そしたらOK貰った。
 好きな子から殺意を向けられるような事態にまで行っちゃうのが、メンヘルっ子との恋愛ですよ。まさに命がけ!だからメンヘルっ子との恋愛にありがちなドロドロした部分を書かずに、上澄みだけを抽出したこの物語に反発を覚えるのかもね。

電波大戦

電波大戦

竹熊「あと不思議ちゃんとか。今だとゴスロリとかいるじゃん。『下妻物語』とか見るとよく分かるけど、腹の中はドロドロでさ。けっこうキツイものがあるよ。ただね、俺、そういうの嫌いじゃないんだよ。オノ・ヨーコとか好きだったから。」
p.42

 さすが竹熊師匠ッ!良く分かってらっしゃる!エレGYに足りないのは、このドロドロさ。

NHKにようこそ! (角川文庫)

NHKにようこそ! (角川文庫)

 前述した滝本竜彦氏の『NHKにようこそ!』なんかは、ヒロインである岬ちゃんは主人公の佐藤達彦がダメ人間だからまともに相手出来るって設定で、良く考えたらすんげー黒いんだよね。それって自分が見下せる相手じゃないとダメって事じゃん。岬ちゃんが欲しいのは自分より確実に下のポジションである主人公なんであって、まかり間違って「成長」なんぞしてしまったら用済みなのですよ。この薄皮一枚剥いだら地獄って状況をひたすら諧謔を交えて面白おかしく書けるから滝本竜彦氏は天才なのであって、ただメンヘルっ子とイチャイチャしてるってだけじゃ、それは作品としては合格点はあげられないなぁ。